フォト
無料ブログはココログ

« 0.999…と区間縮小法≪無限は実在するか4≫ | トップページ | 無理数と有理数と対角線論法≪無限は実在するか6≫ »

2011年3月27日 (日)

「0.999…<1」がダメなわけ≪無限は実在するか5≫

「0.999…」という数字がどんな数を表すかは、数をとらえる立場によって異なる。

実無限の立場での「0.999…」の「…」は、小数以下どこまでも永遠に展開され続けることが可能であるだけでなく、実際にその永遠の果てにまで到達したものであると考える。だから、実質的な無限小数である。ある意味で無理数だととらえられるものであり、「1」に等しい。「0.999…=1」である。

可能無限の立場での「0.999…」は、小数以下のどこまでも小さな位へ展開されることが可能であるけれど、実際にはどこかで展開が終わり有限の値として取り出すしかないものだと考える。だから、果てしない可能性をもつ有限小数、つまり有理数だととらえられるものであり、その意味で、「1」より小さい。「0.999…<1」である。

では、第1の実無限の体系でも第2の可能無限の体系でもないような、第3の数体系、つまり、「0.999…」を実質的な無限小数としてとらえながら、「1」より小さい「0.999…<1」とするような体系は、あるだろうか。

第3の数体系

第3の数体系では、「0.999…」は「1」より小さい。なぜなら、単純に一の位の「0」と「1」では「0」の方が小さいからである。・・・とする。

前節でみたように、第1体系の一般的な区間縮小法が「0.999…=1」とするのは、区間の設定を閉区間とし、たとえば[0,1](0以上1以下)[1,2](1以上2以下)などの二つの区間の両方が「1」を含んでしまうため、「1」という一つの数が「0.999…」と[1.000…」の二つの表記を持つことになってしまったためだった。

0999_2

そこで、ここでは、この区間分けを[0,1)(0以上1未満)[1,2)(1以上2未満のように右片側を開区間とする。
はじめから2つの区間が重なりを持たないような分け方にしておけば、一つの数が二つの表記を持つことはなくなるはずだ。

では、この体系で「0.999…」とはいかなる数だろうか。

0999_5 「0.999…」の一の位は「0」だから、区間[0,1)に含まれ、[1,2)には含まれない。小数1位が「9」だから、区間[0.9,1)に含まれる。そして、小数点以下どこまでも各位に「9」が並ぶので、区間[0.999…9,1)に含まれることになり、そして、その無限に達する彼方で「1未満の数のうちでもっとも大きな数」になる。

だから、「0.999…<1」である。

0999_4

しかし、この体系には、いくつかの問題がある。

「0.999…」が「1未満の数のうちでもっとも大きな数」なのだとしたら、となりあう二つの実数が取り出せることになってしまう。
つまり、ある意味で、この「0.999…」と「1」は数直線の左右に分かれた「左の切断面」と「右の切断面」になるとも言える。

そうすると、たとえば、「0」から「0.999…」までの線分を切り取ったとき、その切り取った線分の長さは「0.999…」であるのに、切り取られた側から見た長さが「1.000…」であって、その両者が違うものにされてしまうことになる。切り取った部分と切り取られた部分が違う長さを持つなんて数体系が、まともな体系であるだろうか。

二つの数が同じ数でないのであれば、両者には差があるはずである。有限の差があるのであれば、アルキメデスの公理から、この二つの数の間に挟み込むことのできる有理数が存在できるはずである。
しかし、「0.999…」と「1」との間にそのような数はあり得ない。だから、この第3体系はアルキメデスの公理を認めない。

だいたい、「0.999…」と「1」に差など、無いのだ。
この両者が等しくないのであれば「1-0.999…」の引き算の答えは「0」以外の値になるはずだ。しかし、この体系で「1」と「0.999…」は引き算を許さない。

差がないのであれば、この二つを違う数だとすることに、何かの意味があるのだろうか。

また、デデキントは数直線の切断によって実数を示せるとした。このデデキント切断の考えによると、実数「1」は「1より小さい全ての有理数の集合」であり、実数「0.999…」は「0.999…より小さい全ての有理数の集合」である。
そして、ここで、「0.999…」が「1未満の数のうちのもっとも大きな無理数」なのであれば、「1より小さい全ての有理数の集合」と「0.999…より小さい全ての有理数の集合」はまったく同じものになる。デデキント切断によるとこの二つは同じ数になってしまうのだ。
だから、この第3体系はデデキント切断による実数の定義も認めない。

このように見てくると、やはり、この体系は使い物にならないようだ。

「0」から「0.999…」までの長さも、「0」から「1」までの長さも同じものでしかないのに、それを違うものだと言い張っているだけになってしまっているのだ。

だから、「0.999…<1」としてよいのは、「0.999…」を無限ととらえず有限小数ととらえる可能無限の立場だけである。
「0.999…」を無限とみるのならば、実無限の立場で考えるのならば、「0.999…」は正しく「1」だとすべきであるのだ。

 

次節では、無限の濃さなるものを見ていきながら、実数と有理数との違いを考えたい。

つづく

無限は実在するか目次へ

大阪哲学同好会に来ませんか

« 0.999…と区間縮小法≪無限は実在するか4≫ | トップページ | 無理数と有理数と対角線論法≪無限は実在するか6≫ »

コメント

最近このホームページを知りました。私も哲学、数学に興味があり、大変楽しく読ませていただいております。

他のサイトにも実無限、可能無限の話題に 0.999… = 1? について言及しています。

1/3 = 0.333… に矛盾がなければ
0.999… = 0.333… + 0.333… + 0.333… = 1/3+1/3+1/3 = 1
即ち 0.999… = 1 となる。

循環小数を分数にする。
x = 0.999…, 10x = 9.999…, 10x - x = 9.999… - 0.999… = 9, 即ち 9x = 9,
つまり x = 0.999… = 1 となる。

つまり循環小数の考え方では、もともと 0.999… = 1 とし、実無限も可能無限も関係ないのではないでしょうか?

循環小数の捕らえ方も疑問の余地があるのでしょうかね。

貴殿のサイトのファンになりました。今後ともご活躍を期待します。

老いた技術者さん、コメントありがとうございます。
無限を捉えるには人間の言語を超える必要があり、どこかで矛盾を抱えることになるので難しいですが、とても面白いですよね。僕の捉え方にもおかしなところがあると思いますので、指摘してもらえればうれしいです。よろしくお願いします。
さて、「循環小数」として捉える「0.999…」について、老いた技術者さんの「10x - x = 9.999… - 0.999… = 9, 即ち 9x = 9, 」という説明は無意識のうちに、実無限を底に敷いていると思います。本ブログの「0.999…の「…」は何を意味するか≪無限は実在するか3≫」のなかの「①代数的説明」で取り扱いましたので、そちらを読んでください。ですので、実無限と可能無限が関係なくなるというのには賛同できません。ご検証ご検討ください。

素朴な疑問

9x = 9 は、ご存知のように、循環小数を分数にするごく一般的な手法として知られている方法です。

1/3 = 0.333… は可能無限では 1/3 ≠ 0.333… でしょうか?
つまり循環小数の解釈に、実無限と可能無限に違いがあるのだろうかという素朴な疑問がわきます。
1/3 = 0.333… は、もじどうり「その可能性はあるが、真実は神のみぞ知る」でしょうか。

老いた技術者さんこんばんは。
丁寧に考えてもらって、コメント頂けてうれしいです。老いた技術者さんの思索に近づけるか分かりませんが、一緒に考えたいと思います。

決して到達し得ないはずの、果てしない永遠の彼方にまで達してしまうのが実無限。その矛盾をはらんだ彼方の数値を取り得るのが実無限です。だから、「0.333…」の「…」は「どこまでも続く」という意味だけでなく、「永遠の彼方にまで達してしまっている」ことを表す。だから、実無限の「0.333…」は正しく「1/3」です。
これに対して、どこまでも果てしなく進むことができるのだけれど、取り出せる数値は結局、有限でしかないのが可能無限。矛盾の彼方には達しない数値しかとらないのが可能無限です。だから、「0.333…」の「…」は「どこまでも続けることができるけれど、某かの数値を取るときに終わりが来てしまう」という意味でしかない。だから、可能無限の「0.333…」は決して「1/3」には達し得ないのです。「0.333…≠1/3」なのです。

そして、可能無限派によると「神のみぞ知る」などという境地さえ認めないと思います。単純に人間に到達できるものだけを「在る」とする立場が可能無限だからです。

更なる素朴な疑問

1/3 が循環小数になるのは、数値を10進法で表記するからで数値そのものの特性によるものではありません。
例えば 3/1 を 12進法 で表記すれば循環小数になりません。ですから10進法表記のような、循環小数を3個たして循環小数になる、ということはありません。

ですから、数学に関する限りにおいては、数値そのものの特性は表記方法によって変わりませんから
「循環小数0.999…と実数1は表記方法が違っているが同値である。」
と結論ずけても矛盾はないと思いますがどうでしょうか。

ただ「0.999…を循環小数として把握するのではなく、限りなく1に近い実数として把握すべきである。」が実無限と可能無限の違いとするなら解らないわけではないのですが?

訂正

前回のコメントで 1/3 を 3/1 と間違って記しました。訂正させてください。正しくは

例えば 1/3 を 12進法 で表記すれば循環小数になりません。ですから10進法表記のような、循環小数を3個たして循環小数になる、ということはありません。

です。

横山信幸様には、小生のような老人の相手をしてくださり、恐縮しております。私は数学の専門家ではありませんので、こちらの考え違いなどを、遠慮なくご指摘ください。

老いた技術者さん。こんばんは。たいへん面白いです。僕も数学にも哲学にも全くの素人です。遠慮が要らないのはお互い様ですね。興味深い討論ができてとてもうれしいです。

さて、老いた技術者さんの説明でよく分からないところがあります。「循環小数0.999…と実数1は表記方法が違っているが同値である。」というのは、実無限では当然なのですが、可能無限でも同値であるとおっしゃるのなら、それは間違いだと思うのです。
「1/3を12進法で表すと0.4(12進法)になる。これを10進法で表すと0.333…(10進法)になる。同じ数値を違う表記法で記しただけなので、どれも同じ値である。ゆえに
1/3=0.4(12進法)=0.333…(10進法)
となる。」
というのが老いた技術者さんの言われているところだと思いますが、2つの点でこれは可能無限でも同値になるという説明にはなっていないのではないでしょうか。
1つめは、実無限・可能無限というのは無限に対する立場の違いを示す言葉であって、数の違いを示す言葉ではないのであって、「0.333…は実無限的だ」とか「可能無限的だ」という言い方はできないということです。「或る値が1/3と同値であるから、それは有理数だ」ということはできますが「それは可能無限的な数だ」とは言えません。
2つめは、説明が論点先取だと言えるものだということです。というのは、結局、先の説明は
「0.4(12進数)と0.333…(10進数)は同じ数値である。ゆえに、0.4(12進法)=0.333…(10進法)となる。」
と言ってることになるからです。正しくはこうなるのだと思います。
「1/3は12進法で表すと0.4(12進法)(可能無限・実無限とも)になる。そして、10進法で表すと実無限では0.333…(10進法)になり、可能無限では表記不可能になる。ゆえに、実無限では1/3=0.4(12進法)=0.333…(10進法)と書けるが、可能無限では1/3=0.4(12進法)までしか書けない。」
以上です。どうでしょうか。僕が老いた技術者さんの意図を勘違いしてしまっているかもしれません。
ただ、「ただ「0.999…を循環小数として把握するのではなく、限りなく1に近い実数として把握すべきである。」が実無限と可能無限の違いとするなら解らないわけではないのですが?」とおっしゃるのはその通りだと思います。そして僕は、可能無限にとって0.999…は限りなく1に近い「有理数」なのだと思っています。

お返事ありがとうございます。横山様のご理解で間違いありません。ここに至った経緯を説明させてください。

物理や工学は、日々、技術の進歩、自然現象の新発見、認識の限界などに対応しなければならないのに対して
「数学は紙と鉛筆さえあれば、空想の世界でも対象にでき、現実世界とかけ離れていても成り立つ学問だ。
公理から始まって、定理は一度証明されれば、どんなアプローチをとっても覆されることはない。」という思い込みが私にはあります。だからアインシュタインの相対性理論にも、物質が光速を超えるという発見があったとしても数学だけは動じることがない、という妄想をいだいています。

アキレスと亀のパラドクスも、物理の世界では速度と距離の関係で即座に追い越しが完了します。このパラドクスは距離は0.999…に無限に近づき、時間差は無限に0に近づくという空想の世界です。これも 0.999…=1 とすれば追いつき追い越す瞬間も理解できるような感覚になります。

そもそもこの件に興味をもったのは、半月ほど前に YouTube で Dangerous Knowledge (Philosophy, Physics, Mathematics) -BBC をみたのがきっかけで、カントールについて検索し、そこで 0.999…=1? が言及され、上記の数学に関する私の思い込み(他人から見れば妄想)に反する議論に疑問を持ったわけです。
ですから私の知識はここ数週間のネットで得ただけのものでしかなく勉強不足といわれてもしかたありません。この議論はなかなか納得させるのも、納得させらるのも難しいとおもいます。

このサイトには私の興味をそそるテーマがあり、ご迷惑でなければ、また投稿させていただきます。ありがとうございました

老いた技術者さん、こんばんは。
コメントいただいて楽しい討論ができました。
これからもよろしくお願いします。いつでも遠慮なく、お越しください。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/548679/51233102

この記事へのトラックバック一覧です: 「0.999…<1」がダメなわけ≪無限は実在するか5≫:

« 0.999…と区間縮小法≪無限は実在するか4≫ | トップページ | 無理数と有理数と対角線論法≪無限は実在するか6≫ »