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2011年1月 8日 (土)

外延が定まらなくても集合か≪ラッセルパラドクスの内包と外延3≫

内包と外延

「自分自身を要素として持たない集合の集合」というものを想定するとパラドクスが生じてしまった。もともと、集合とは何なのか。その辺りから考えなおす必要がありそうだ。

そこで、集合とは何かを考えてみたい。
集合論を確立したカントールによれば「集合とは対象を集めた一つの全体である」というような、分かったような分からないようなイメージでしか語られていない。だから、(公理集合論が確立されるまでは)集合とは何かという問いに対して確たる答えを持たないままに、さまざまな集合が論じられてきた。

だから、いま問題にしているラッセルのパラドックス{X|X∉X}でも、集合全般の捉え方にもともと問題があったのではないか。
何か一つの集合がどのようなものであるかを定義したいとき、その定め方が2つある。
要素の全てを挙げることによって決定する「外延」(extension)と、要素に共通する性質を示すことによって決定する「内包」(intension)である。

もともと「エクステンション(外延)」とは「外へ拡張するもの」で、「インテンション(内包)」とは「内側のもの」という意味合いであるらしい。「ヘアエクステンション」は髪の毛の外に拡張した髪の毛だ。「インテンション」が「意図」や「内心」などという意味で言われることもあるみたいだ。

「外延」では、集合の要素を{ }かっこのなかにすべて並べてその成立を示す。
たとえば、{x,y}ならば、xとyの二つだけの要素からなる集合、{ }ならば、要素のない空集合、{{ }}あるいは{φ}ならば、空集合だけの集合、というようにだ。
有限個の要素からなる集合だけでなく、{1,2,3,4…}ならば自然数全体の集合、というように要素が無限にあるような集合でも示すことができる。

これに対して、「内包」では、{x| }の中でその集合がどんな性質のものが集まったものであるかを示すことによって、集合を表す。
たとえば、{x|Fx}ならば、Fxが真となるようなxの集合、{x|xは犬である}ならば、犬の集合、{x|xは白い}ならば、白いものすべての集合、というようにだ。
ラッセルのパラドクスも、集合の要素を「自分自身を要素として持たない集合」あるいは{X|X∉X}という表現によって示しているので、内包的な定義である。

ラッセルのパラドクスは正しい内包表現か

この{X|X∉X}を、外延的に表すことができるだろうか。しかし、それには「自分自身を要素として持たない集合」をすべて書きださなくてはならない。そんなこと、どう考えても不可能である。
まあ、外延表現ができなかったとしても、内包によってその内容がきちんと決定されているのであれば、その集合は確定されていると言えるだろう。
だが逆に、内包がどれほどもっともらしく表現されていたとしても、外延が確定しきれないのであれば、その内包は不十分なものでしかなく、集合として確定されているとは言えない。だから、たとえば、「外延が確定できない集合」なんていうものは集合ではない。単なるナンセンスな発言である。

では、ラッセルのパラドクスは正しい内包表現だろうか。この視点で見ると、ラッセルのパラドクス{X|X∉X}は内包表現が不十分で、集合として成立していないと言えるのではないか。これだけでは、その全ての要素を決定することができていない。Wそれ自身が自分の要素として集合に含まれるかどうかが確定されないからである。

つまり、ラッセルのパラドクスとは、単に、不十分は内包表現によって集合を確定させようとしていたことによる混乱だったとも、言えるだろう。単なるナンセンスな発言だったのだ。

外延が確定できないなら集合ではないのだ。
外延を確定できるような「内包」の表現にすることで、はじめて集合にすることができる。

だから、たとえば、集合Wの内包表現を次のようにしてみる。
集合Wは「自分自身を要素としない集合の集合である。ただし、集合W自身は自分自身の要素として含まれるものとする」、あるいは、集合Wは「自分自身を要素としない集合の集合である。ただし、集合W自身は自分自身の要素として含まれないものとする」。このように定義することによって、はじめて、Wは自らを含むか否かを決定することができ、はじめて集合になるのである。
そして、ラッセルのパラドクス「集合バージョン」は、パラドクスはなくなって、片付く。

では、「述語バージョン」はどうなるだろうか。また、ウィトゲンシュタインや現代数学は、このパラドクスにどう対処したのだろうか。

つづくラッセルパラドクスの内包と外延4

ラッセルパラドクスの内包と外延 目次

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