フォト
無料ブログはココログ

« 外延が定まらなくても述語か≪ラッセルパラドクスの内包と外延5≫ | トップページ | 集合と関数はどう違うか≪ラッセルパラドクスの内包と外延7≫ »

2011年1月16日 (日)

ラッセルのパラドクスの作り方・関数としての一般化≪ラッセルパラドクスの内包と外延6≫

内包と外延とは

ラッセルのパラドクス一般化

ラッセルのパラドクスには、述語バージョン、集合バージョンのほかにも、「床屋」、「目録の目録」、「市長市の市長」など、いくつかの「お話」がある。これらのいろいろなパラドクスを一般化することで、このパラドクスの構造をはっきりさせることにチャレンジしたい。そこで、一般化のためにこれらの「お話」を関数として考えてみる。
次のようなものになると思われる。
Russell1

Fx=a(Fx≠xのとき)またはFx=x(Fx≠aのとき)…において、Faは?

つまり、ラッセルのパラドクスとは「任意の対象Xについて、ある変換Fをほどこすと、Xのままであるか、ある決まったaになるかの、どちらか(必ずどちらか一方だけ)であるとする。このときaに変換Fをほどこすとどうなるか?」を問う関数だと言える。
そして、この関数にいくつかの事がらを当てはめると、具体的な「パラドクスのお話」が出来上がってくるのだ。

ラッセルのパラドクスの作り方

順にラッセルのパラドクスの作られ方を見てみよう。

①対象Xのカテゴリーやテーマを考える
何か、「お話」の中心になる対象xやテーマを考える。たとえば、「村人」「ひげ」を考える。
②自分自身に対して関係できるような関係「R~」を考える
たとえば、「ひげを剃ってもらう」を考える。
③Xの定義域を決める
考えているものは関数だから、定義域を設定することができる。定義域というのは、入力項Xの範囲を示すもので、定義域が自然数だったら、自然数以外は考えなくてもよくなる。関数はその定義域から決まる範囲だけで働くことができればそれでいいものになるのである。そこで、「XとのR~の関係にある相手X」に当てはめられるようなxの範囲を考え、定義域とする。たとえば、定義域「村人にひげを剃ってもらう村人」を考える。
④定項aを考える
「自分に対してR~していないXに限って、そしてその全てに対してR~しているa」というものを設定し、定項aとする。たとえば、「自分のひげを剃ってもらう村人に限って、そして自分に剃ってもらわない人(つまり自分で剃らない人)の全てが、ひげを剃ってもらう相手の村人」を考える。
⑤関数Fを作り、その意味を考える
「xが自分自身に対してR~をしない場合に限り、その全てのXに対してR~しているものは、決まったaである」とするような関数を作る。
⑥aを関数Fに代入し、適当なお話を考える
これで、パラドクスが出来上がる。

村の床屋

つまり、こうだ。
①対象のカテゴリー、テーマ:村人、ひげ ②関係R:ひげを剃ってもらう ③Xの定義域:村人にひげを剃ってもらう村人 ④定項a:自分でひげを剃らない村人全てのひげを剃る床屋 ⑤関数F:村人Xが自分のひげを剃らないときに限り、その様な村人の全てのひげを剃る床屋aを示す ⑥パラドクスのお話:ある村の床屋は一人で、自分でひげを剃らない村人のひげをすべて剃り、それ以外は剃らない。では、その床屋は自分のひげを剃るか。
以上、「床屋」のパラドクスの出来上がり。

目録の目録

他の例でも考えてみよう。
①対象のカテゴリー、テーマ:図書目録 ②関係R:目録に載っている ③Xの定義域:ある図書館の図書目録を載せている目録 ④定項a:自分を載せていない目録を載せている目録 ⑤関数F:目録Xが自分を載せていないときに限り、その全ての目録を載せている目録aを示す ⑥パラドクスのお話:ある図書館に所蔵される目録の中で、自分自身を掲載していない目録ばかりを集めて「目録の目録」をつくることになった。しかし、その「目録の目録」自身はそれに掲載されるべきだろうか?
以上、「目録の目録」のパラドクス出来上がり。

市長市の市長

①対象のカテゴリー、テーマ:市長 ②関係R:住んでいる市の市長 ③Xの定義域:市長が住む市の市長 ④定項a:自分が住んでいない市の市長に限って、そして自分が住んでない市の市長の全てが、住んでいる市の市長 ⑤関数F:市長Xが自分の市に住んでいないとき、その市長たちが住む市があって、その市長aを示す ⑥パラドクスのお話:ある国では、自分が治めている市内に住んでない市長は、すべて「市長市」という市に住まねばならないとする。この「市長市」の市長はどこに住むべきか?
以上、「市長市の市長」のパラドクス出来上がり。

述語バージョン

「述語」バージョンでは、どんな関数になるか。
①対象のカテゴリー、テーマ:述語 ②関係R:述語づける ③Xの定義域:述語を述語づける述語 ④定項a:自分自身を述語づけない述語に限って、そして自身を述語づけない全ての述語を、述語づける述語。つまり「自身を述語づけない述語である」という述語
⑤関数F:述語Xが自身を述語づけないときに、その述語xを述語づける述語a「自身を述語づけない述語である」を示す ⑥パラドクスのお話:wを、『それ自身に述語づけられない述語である』という述語だとすると、wはそれ自身について述語づけられるか。
以上、「述語」バージョンの出来上がり。

集合バージョン

では、「集合」バージョンではどうか。
①対象のカテゴリー、テーマ集合 ②関係R:要素として持つ ③Xの定義域:集合を要素として持つ集合 ④定項a:自分自身を要素として持たない集合に限って、そして自身を要素として持たない集合の全てを、要素として持つ集合。つまり「自身を要素としない集合の集合」 ⑤関数F:集合Xが自分を要素として持たないとき、その集合の集合aを示す。 ⑥パラドクスのお話:自身を要素として持たない集合の集合を考えると、その集合は自身を要素として持つか。
以上、「集合」バージョンの出来上がり。

もっと新しいバージョン

このように一般化して見ると、比較的簡単に、もっと新しいパラドクスの「お話」も作ることができると思う。
僕も自分で2つ作ってみた。

「元帥を尊敬せよ」バージョン:ある国で「すべての人は、誰よりも(もちろん自分自身よりも)、元帥様を最も尊敬しなければならない」という法律が制定された。この時、この元帥自身は誰を尊敬すべきか?

「リンク先表示」バージョン:あらゆるウェブページのうち、自身のURLを表示していないページばかりをすべて集め、そのURLを表示するページを作った。さて、このページには自身のURLが表示されているか?

これを読んで、もし新しいパラドクスを作った方がいらしたら、ぜひ、↓コメントから教えてください。次節では、集合としてのパラドクス文と関数としてのパラドクス文の構造にどんな違いがあるかを考えてみたい。

つづく ラッセルパラドクスの内包と外延7

ラッセルパラドクスの内包と外延 目次

« 外延が定まらなくても述語か≪ラッセルパラドクスの内包と外延5≫ | トップページ | 集合と関数はどう違うか≪ラッセルパラドクスの内包と外延7≫ »

コメント

自身を占うことができない人だけを占い、その全てを占う占い師。この占い師は自分自身のことを占うべきか。

コックさんが1人しかいない村。
自分で料理しない人すべての料理を作り、それ以外は作らない。
コックさんの料理は誰がつくるか?

サリーさん
ありがとうございます。スマートでわかりやすいパラドクスですね。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/548679/50601993

この記事へのトラックバック一覧です: ラッセルのパラドクスの作り方・関数としての一般化≪ラッセルパラドクスの内包と外延6≫:

« 外延が定まらなくても述語か≪ラッセルパラドクスの内包と外延5≫ | トップページ | 集合と関数はどう違うか≪ラッセルパラドクスの内包と外延7≫ »